谷村株式会社新興製作所（現 株式会社新興製作所）が１９７７年に発売したモデムです．谷村新興は国内で初めてテレプリンタ装置を開発した企業で，その後はテレックスやワイヤドットプリンタなども製造していました．

このモデムは愛媛県にお住まいの永田ＯＭ（JA5EYW）が，２５年間大切に保管されていた予備機を譲り受けたものです．現在でも新品の状態が保たれており，数少ない日本製TUとして資料的価値のある貴重な製品です．

YS-230はシリーズ化されており，以下の製品群が用意されていました．
YS-230KP　キーボード・プリンタ
YS-230RP　テープリーダ・パンチ
YS-230TU　モデム
YS-230AB　アンサーバック（YS-230KPに内蔵させて使用）

仕様は前年に発売されたHALのST-6000と同等です．別のページで紹介している ST-6000の前面パネル と比べてみてください．ほぼ同じ働きをするスイッチが設けられています．

一部のローカルループやDTH（Decision Threshold Hysteresis = マルチパスによるガーブルを軽減する機能）が省略されている一方，YS-230KPとの接続用コネクタや，AFSKで運用する際に便利なマイクコネクタなどが新たに追加されています．主要回路は，定数に至るまで多くの部分でST-6000を手本にした形跡が見受けられます．

また，フロントパネルの銘板の取り付け部分はエンボス加工が施されており，銘板がピッタリとはまり込むようになっています．手の込んだ作りに感心します．

カバーを外した状態です．

右側半分はチューニング・スコープと電源で占められており，左側表面にデモジュレータ基板，裏面にモジュレータ基板が取り付けられています．基板を含めて，とても上質な部品が使われています．

本体底面のカバーを外して撮影したモジュレータ基板です．
ST-6000と同様，AFSK信号の局発には水晶が使われています．

チューニング・スコープの制御基板です．

本体に垂直に取り付けられており，輝線の水平位置，垂直位置，輝度，ＸＹ方向それぞれの増幅率を調整できます．

後面パネルには各種のインターフェースが取り付けられています．

特筆すべきはパネル自体にクロームメッキが施されていることで，防錆性はもちろん，装置全体の質感向上に役だっています．

全体に渡って本当に手の込んだ造りで，設計者の特別な思い入れが偲ばれます．