クラインシュミットのASR（Automatioc Send Receive），TT-76/GGCです．

このマシンは紙テープの穿孔（センコウ）を主な目的に設計されているため，受信信号もロールペーパにではなく，紙テープに穿孔と同時に印字されます．

ローカル・ループ電源を内蔵しているので，単独での動作が可能です．

TT-4/TGではノーメンクレーチャには「クラインシュミット」の社名だけが記載されていますが，このマシンでは「スミスコロナ」の子会社として「クラインシュミット」の名前が記載されています．

こういったマシンは，放出時に軍によってメンテナンスされることが多いようで，その時にノーメンクレーチャが交換されることがあります．その場合には，本来のエッチング（文字部分が飛び出している）ではなく，アルミ板に印刷した「簡易型」と交換されることがほとんどです．本機も「簡易型」のタグが付いています．

ノーメンクレーチャの左下に，カバーを留めているラッチが見えます．

カバー裏側の写真です．

ガバナー・モータ調整用のフォーク（音叉）と照明ランプが見えます．ランプは樹脂製のチューブによって，紙テープの穿孔/印刷部へと導かれます．このマシンでは「紙テープの穿孔/印刷部」以外への照明は不要であり，何故このような回りくどい方法が採用されたのか不明です．Hi

本体左側に設置されたTD（Transmitter Distributer）部分です．

ケース右側を貫通するドライブシャフトを通じて，本体からの動力で動作します．

印字部分はデイジーホイールになっており，穿孔と同時に文字が印字される仕組みです．穿孔によって出るゴミ屑（Chad）は，ホイール左側のダクト（銀色の導波管のような部分）を通じて外部に排出されます．

穿孔部と印字部の位置の違いにより，文字は後ろ方向へ６文字分ズレて印字されます．

本体左側の操作パネル部分です．電源スイッチ，照明スイッチ．モータスイッチが配置されています．

「END OF LINE INDICATOR」と表示されているランプは，穿孔した文字が一定の数に達すると点灯して，改行/復帰すべきことを知らせてくれます．一般的なロールペーパへの印字と違って，改行/復帰位置が直感的に判らないため設けられたのでしょう．

キーボード自体の作りはTT-4/TGなどと似ていますが，同一文字を連続して穿孔（および印字）するための「REPEAT」キーが右上に追加されています．

写真では光の加減で判り難いのですが，キーボード上部にカラム位置を表示するスケールがあります．オペレータはこのスケールを見て，適当な位置で改行/復帰キーを打つことになります．

本体右側の制御パネル部分です．キーボードの有効/無効の切り替えスイッチ，ローカル・ループを切断する「BREAK」ボタン，機能切り替えようのロータリースイッチがあります．各ポジションでの機能は以下の通りです．

１．TDによる送信，ローカル・ループによる送受信
２．TDまたはキーボードからの穿孔（紙テープのコピー）
３．キーボードからの穿孔

スイッチ部分は写真のようなティルト機構が付いておりメンテナンスの際に重宝します．

本体左側面にはローカル・ループ信号接続用のジャックが並んでいます．

テレプリンタではネジ式ターミナルを使って配線することが多かったのですが，このマシンは標準的なフォノ・ジャックを使えるので大変便利です．

TDのクローズアップです．

ちょっと乱暴ですが，メカ部を３個のブロックに分けると・・・

左側 ： 穿孔/印字ブロック
中央 ： セレクタ・マグネットブロック
右側 ： モータブロック

・・・といったところでしょうか．

モジュール化された電源部です．ローカル・ループ用の電源や紙テープ切れを知らせる警告ブザーなどが入っています．

このマシンは75Baudで稼働するよう設定されていたため，45Baudへのギア交換を行いました．作業を終えて電源を投入したところ，かなりヤバイ感じの「ビィ～」という異音が発生しました．私はてっきりギアの組み方が悪かったものと思い，丁寧に確認しましたが異常は見つかりません．次に電源の平滑コンデンサを疑いましたが，これも異常ありません・・・

結局，紙テープがリールから外れていたことによる「紙切れ警告ブザー」だったのですが，これに気付くまで生きた心地がしませんでした．Hi

レンジファインダのダイアルです．どのメカニカル・マシンにも共通して言えることですが，レンジファインダは必ずマシンが動いている時に調整しなければなりません．止まっているときに無理にダイアルを回すと，最悪の場合セレクタ機構に致命的なダメージを与えることがあります．

セレクタマグネットの電圧（バイアス）設定用ポテンショ・メータです．

TT-76/GGCによるオペレーション